車探しは持久戦と心得た
半年くらい前から、車を買い替えたいと思うようになり、特にこの数ヶ月は血眼になって中古車検索サイトを行ったり来たり、いくつか試乗もした。
車の使いみちは、週に数回、剣道の稽古に行くのに往復10km程度移動するのがメインで、試合などで月1くらいの頻度で往復1000kmくらい走ったりもする。今乗っている車(二年前に同じ道場の人の日本帰国の際に譲ってもらったAudi A1)は、この用途にはぴったり。全長4m弱と小柄なので駐車スペースを見つけるのにもさほど苦労しない(後述)。7年落ち走行距離約7万キロでトラブルは今の所全くなし。竹刀が荷室に入らないので前席を倒して後部座席に置かないといけないのが面倒なくらいで、特に不満はない。

週末などに剣道の大きな試合やセミナーのために旅行するとき、ドイツでは基本的に体育館に各々マットレスや寝袋を持ち込んで雑魚寝をする。シャワーもトイレもあるし、体育館によっては暖房や電源もあるし、何より安上がりなので合理的ではあるのだけど、遅くまで酒盛りをする人や猛烈ないびきをかく人がいたりして、安眠できるかどうかは運次第ということもあるし、腰痛持ちの僕は寝袋やエアマットレスでは腰や背中の痛みで夜中に何度も目が覚めてしまう。
そういうのが嫌な人はおとなしく近くのホテルに泊まったりするのだけど、一昨年フランクフルトで会場近くのホテルに泊まったら体中ダニに噛まれ、翌日から二週間くらい痒みが続いて気が狂いそうになったこともあり、あまりホテルに泊まりたくない。
そんな事情があって車中泊がしたいな、と思うようになってきた。上記のような事情だけでなく、普通に旅行するときでも、道中で車中泊ができれば、スケジュールにとらわれず柔軟な移動ができる。せっかく陸続きのヨーロッパにいるのだから、若い今のうちにそういうスタイルで長距離のロードトリップというのをたくさんしておきたい。去年の春のウクライナ旅行が、その思いをさらに強くした。
ということで、
腰痛持ちでも車中泊ができる車
というのが必須の条件となった。要は、後部座席を倒したときに、十分長く平らなフロアができる車、ということになる。
他の条件は、
- 価格: 25k €以下
頭金10k €、3年の残価設定ローンで月々約50€くらいを返済しつつ約350€づつ積み立てておいて、3年後に車を返却するか残価を返済して車を買い取るか選べる余地を残しておく。
一括でも買えるくらいの余裕はあるのだけど、いまのところ投資信託のパフォーマンスがローンの利率を悠に上回っているので、価格から残価を引いたぶんを頭金として支払っておいて月々の返済額を抑え、残りは3年間積立てる。 - USBポートとBluetooth
- アウトバーンをストレスなく走れるエンジン
追い越し車線を200km/hオーバーでぶっ飛ばしたいということではなく、合流や追い越しの際に素早く加速できるとか、振動やノイズが少なく、リラックスして長距離走れる、ということ。車の大きさにもよるけれど、排気量1.4–2.0L程度、120–150PS程度あれば十分だと思われる。 - 2016年以降のモデル
最新モデルのひとつ前のモデル、というイメージ。目安でしかないけれど、大きなトラブルを経験する可能性を小さくしたい。残価が比較的高く、頭金や月々の支払いを抑えられる(≈なにかの事情で収入が大きく減った場合のリスクを小さくできる)というメリットもある。
それに加えて、基本的に新しいモデルのほうが燃費が良い。
あればいいな、という条件は、嬉しい順に
- 前後のパーキングセンサー
基本的に縦列駐車なので、あると安心。 - ディーゼルエンジン
なにかと目の敵にされるディーゼルだけれど、燃費は良いし、クリーンディーゼルであれば環境負荷も比較的小さい。 - Bピラー以降のスモークガラス
意図して覗き込まない限り外から中の様子が見えなくなるので安心。ただし、自分でフィルムを貼ることもできるし、結局何かで目張りをしたほうが良いということになるかもしれない。 - パノラマルーフ
仰向けに寝たときに目の前が天井なのとガラスなのとでは窮屈さの度合いが違う。天井の低いステーションワゴンなら優先順位は上がる。 - ナビ
普段はWazeというアプリを使っているのでナビはなくても良いけれど、スマホをなくしたりネットに繋がらないときに、車載ナビがあると心強い。
それ以外に、現在住んでいるのが繁華街のすぐ近くということから、
長すぎてはいけない
という制約がつく。今乗っているAudi A1 (3.9m)でも、週末の夜ともなると駐車スペースを見つけるのは大変で、さらにDOM(移動遊園地)の開催期間、FC St. Pauliのゲーム日ともなると1時間近く近所をぐるぐる走り回るはめになったりする。というわけで、いくら希望の条件にマッチしていてもキャンピングカーとかミニバンとかは厳しい。
中古検索サイトを眺めていて最初にピンときたのがAudi A4。後部座席を倒せばおそらく180cm以下の人なら脚を伸ばして寝られるくらいの十分すぎるスペースがある。

試乗してさらに気に入った。190PSのクワトロ(四輪駆動)はアウトバーンもらくらく走れ、デザインもとても好みに合う。実は予算をオーバーしていた(27k €)のだが、あまりに気に入ったので、買う気があることをディーラーに伝え、契約書まで準備してもらい、あとはサインするだけ、という段階まで行った。二晩くらい、契約書を読み込みんでからサインして持ってくるよ、と伝えて帰ってきた。
しかし、保険料が現在の3倍近くなることに加え、長すぎるという問題が発覚した。4.7mもあると、週末以外でも難儀するのが目に見える。駐車スペース問題への対策として近所の駐車場を借りるという手もあるのだが、一番安いところでも月100€程度かかる。
そういった現実を目の当たりにして決心がつかなくなり、とりあえずディーラーには正直に理由とまだサインできない旨を伝えた。
その後一ヶ月くらいの間A4は売れずにいて、価格は段階的に23k €まで下がった。それでも決心がつかず逡巡しているうちに売れてしまったようだ。
次に試乗したのがVolvo XC40。まだ中古車市場にあまり出回っていない最新モデルで、オプションなしで28k €からと予算を大きく超えるので、現実的な選択肢とは考えていなかった。ただ、デザインが最高に好みなのと、後席を倒したときに真っ平らで十分な広さの床ができることがわかっていたので、「自分にとっての完璧な車」を確認するつもりで試乗に行った。


実際に後席を倒して寝てみると、脚を伸ばして寝ても十分余裕があり、とても快適だった。天井が高いこともあり、窮屈感もない。内外装のデザイン・質感もよく、車体も長すぎない(4.4m)。買う気の無さがにじみ出てしまったのか、「上級のグレードではなくベースの車両を試乗できるか」と何度も訪ねたことでケチな客と思われたのか、ディーラーの側から契約どうこうという話は出てこなかった。
次はVW Tiguan。1年落ちで走行距離35000km、22k €。後席を倒すと少し傾斜ができ、脚を伸ばすと頭が半分くらいはみ出てしまう、というサイズ。安眠できないかもしれない、という気持ちと、毎日ではないのだから足を少し曲げればいいじゃないか、という気持ちとがせめぎ合っていた。


下取りをしてもらいたいと伝えたところ、VWの担当者は車の内外装と走行距離をざっと見ただけで「いい車だね、10k €」と言う。Audiでの査定額が7k€だったことを考えると大きな差だ。下取り額から頭金を引いてもお釣りが来る。
下取りの額の大きさに心を奪われ、Audiのときと同じくあとはサインするだけという段になり、数日後にサインして持ってくる、と伝えて帰った。その後二晩かけて真面目に契約書をすべて英訳して読み込み、納得してサインし、ディーラーの駐車場まで行った。そのときになってふと、「他にもっといい車があるんじゃないか」とか「やっぱり駐車スペース問題に目をつぶってもう少し大きい車のほうがいいんじゃないか」「下取り額が大きいといっても20k €は大きな買い物だ」といった邪念が次々に湧いてきて、15分くらいその場で悩んだ末、引き返してきた。
そのときのTiguanは2ヶ月くらいの間売れずに残っていたが、最近になって売れてしまったようだ。ちょっと後悔している。
Tiguan以来試乗はしていない。
他に候補としているのは、総合的に良いなと思う順に
- Seat Leon ST
- BMW X1
- Seat Ateca
- Audi Q3
- Audi A3
- BMW 3er
- VW Golf Variant
- VW Touran
どれも良い車なので結局どれを選んでも満足するのだろうし、どれを選んでも多少は「別の車にすればよかった」というような気持ちにもなるのだろうから、要件を満たす車を試乗して、気に入ったらあれこれ迷わずに決めてしまったほうが良いのかもしれない。ディーラーのアポを取って試乗して下取りやローンについて話す、というのも結構疲れることだから、選り好みして繰り返したくはない。